-ポタリポタリ。
店を出た時はそんな雨音だった。
ザーザーと夕立の降る薄暗い中、プレートにインストールされた地図を元に、うろ覚えの道をカミヤは戻っていた。
石畳で出来た道は水はけが悪い。
いつの間にか買い物客もまばらになって、さっきまであれだけ賑やかだったショッピングモールは寂しい景色に変わっていた。

「うぅ…寒い。」

初夏とはいえ、夕方の雨は冷たい。
くぼんで出来た水たまりに足を取られる度、買ったばかりの服は汚れていった。
左手に持っている紙袋に目を向ける。
先ほど買った服の一部、濡れるからと言って蛍が二重に包んでくれた紙袋も何処でついたのか所々水滴の跡が滲んでいた。

-パシャ…パシャ…。

ふと違和感を覚えて立ち止まる。
周りを見渡しても自分以外誰も居ない。
だが自分以外にもう一つ、誰かの足音が聞こえたのだ。
とても小さく、頼りない足音が。

雨音に紛れて、微かに聞こえる小さな足音。
耳を澄ますと、走っているような小刻みな音でこっちに近づいてくる。

音の主はカミヤに気がつかないのか、反対側の歩道を走り去って行った。