-ファゴット東部・オーダーメイドブティックエリア-

「うわぁ…完全に場違いだわ。」

逃げるように立ち去ってたどり着いた場所は、おそらく病院服では未だかつて誰一人来た事がないであろう高級感漂うエリアだった。
当然こんな恰好でうろつく人間など他に誰も居ない。
店側からは不審な目で見られ客側からは馬鹿にしたような視線を向けられる。
まぁアブナイ人以外の何物でもないのだが…。

なるべく人目に付かないよう施設内の端を目指して移動していると、店と店に挟まれた細い路地の奥に薄らと明りが点いているのを見つける。
此処から離れたい衝働と興味本位に駆られ、足取りは自然とそっちへ向かっていた。

-龍歌-

黄白色の灯りに照らされた看板にはそう彫られている。
建物自体相当古いようだが、まめに掃除をしているのだろう。
看板には埃一つ付いていなかったし周りの床も綺麗にゴミが取り除かれていた。

~カランカラン…。

鈴のついた木戸を開け、店内に入る。
出迎えに応じたのは…猫?

「いらっしゃい、なのだよお客さん。」

「………あ、どうも。」

もう何も言うまい…カミヤはそう心に誓うのだった。