「えーっと…プレートの前に地図を早く入れてくれませんか?」
周りの取り巻きがこの奇妙な光景に気付いたらしく、後ろから視線を感じる。
と、同時に早くここから立ち去らないといけない衝動に駆られるも彼女はそれを許さない。
先ほどまでのテキパキとした対応に比べて非常に遅く、何一つミスをしないように丁寧に作業をしている。
心なしか震えているようにも見えるのだが…。
「お、お待たせいたしました、地図のデータを入れておきましたのでお使いください。」
「あ、ありがとうございます。」
掠れるような声で、しどろもどろになりながらプレートを手渡す彼女につられ、カミヤは方がむず痒くなるような、妙な緊張をしてしまう。
そして何とも言えない空気が二人を包んでいた。
もちろんその間にもギャラリーは増えている。
ヒソヒソと話し声がする中、途切れ途切れに聞こえてくる単語はほとんど自分の事だろう。
とうとう耐えきれずにプレートをポケットに入れることもなく小走りでその場を立ち去った。
後ろから彼女の声が聞こえるが、カミヤは踵を返さない。
「参ったな…顔……覚えられたよなぁ…。」
ぶつぶつと呟きながら手に持っていたプレートを開く、どうやらデータだけはしっかり入っていたらしい。
直感で操作していくとなんとかマップの使い方が解った。
「…逆か!?」
…どうやら反対方向に走っていたらしい。

