「おはようございます、ファゴットへようこそ!」

「(ファゴット?)あ、えーっと…自分転校してきたばっかで解らないんですけど、ここはどういう場所なんですか?」

「ハイ、こちらは学園内にある複合施設になっております。
何かお探しですか?」

とりあえずここがどんな場所なのかを簡単に説明してくださいと言ったら、受付嬢はデスクの下からプレートとマップの様な物を取り出した。

「こちらの複合施設『ファゴット』は地下2階から6階までの計8階建ての大型施設になっておりまして、通常お客様は地下1階から6階までをご利用いただけます。」

「…?地下二階は?」

「地下2階は主に倉庫となっておりますので、業者の方しか行かれませんね。
地下1階は主に食品や生活用品、この1階と2階は洋服や雑貨類のお店が並んでいます。
3階~5階は隣接している病院の個室があり、6階はテラス、屋外スペースとなっております。」

「ふーん…お店は2階までしかないの?」

「簡単な売店や軽食を提供しているお店ならどこにでもありますが…ほとんどの方が2階までで買い物をお済ませになられますね。
『町』と違ってこのファゴットにある全ての販売店は宅配サービスを行っておりますから。」

(町?)

どうやらこの学園で買い物が出来る場所は此処だけではないらしい。
だが話を聞く限りどうやらこの施設を利用している客層は中流以上が殆どの様だ。
楽しそうに店を回る生徒は皆綺麗な洋服に身を包み、高級そうなバックやアクセサリーを纏っている。
病院で支給されている寝巻のまま来ていた事に今更気付くと、カミヤは少し顔を赤くしながら受付嬢との会話を進めた。