一目で魔法の使用があったと解る、ねじ曲がった木々や荒らされた草花。
いずれも甚大な被害だが肝心の当事者がいない。
警戒しつつ、キョロキョロと周りを見回すと被害の中心から少し離れた場所に見覚えのあるモノが見つけられる。

「ユナ!!」

ねじ曲がった木に守られるように倒れていたユナを抱きかかえると、直撃は無かったのか、何かに守られたのかまだ微かに息をしていた。
これ以上傷がつかないようにゆっくりと持ち上げた時、また爆音が響き渡る。

「!!!?」

音の方向からして、爆音の場所は自分達がいるよりも更に森の奥らしい。
一刻も早く向かいたいが手の中で途切れた呼吸をするユナを連れて行く訳にはいかなかった。

「…クソ!」

とりあえず二人はまだ戦っていると判断し、ひとまずユナを抱きかかえるとなるべく風に当たらないよう注意しながら学園へと引き返す。
自分達が住む部屋か保健室か…とにかく治療をしなければ命が危ない事は明白故に、ラックは飛ぶ速度を上げた。

「早く…急がないと…。」

学園へと向かうラック、だが一瞬突然襲い掛かって来た得体のしれない『何か』によって、体が金縛りにあったように強張る。

「……な…なんだ……今の…?」

思わず後ろを振り向くが、そこに何かいるわけでもない。
得体のしれない悪寒に体を震わせるも、すぐにやるべき事を思い出して一番近い寮の部屋へと向かうのだった。