コッ…コッ…コッ…コ…ギィイイ。

夜を虫たちが知らせる中、漆黒のローブに身を包んだ誰かが家の扉を開ける。
顔も体も隠されているがそのたち振る舞いは品があり、思わず見とれてしまうほどに美しい。

「おや…?」

この家の主なのだろうか?
慣れた手つきでテーブルのランプに火を点けると明かりに照らされて先客がいる事に気がついた。
といってその事に動揺する事も無くゆっくりと男に近づくと焔を宿すランプを眠っている男に翳した。

「う…ん…?」

「キミは…どこから来たのかな?」

ランプの灯に照らされて映った瞳。
眼の覚めたばかりの眼を擦るとそこに見えるのは間違いなく…人

「…~~っつ!!?」

ガバッと起き上がるとしばらくその現実を受け入れる事が出来なかった。