「あ、あぁ…怪我してるのか?」

「聞かなくても解るでしょ…血が落ちる前に巻きたいんだけど…はぁ~。」

溜め息をついて、面倒くさそうに答える相手に若干焦ったのか、慌てて戸棚を開けると綺麗に並べられた医療用具の中から包帯と脱脂綿を取り出す。
そのまま相手に手渡そうとしたのだが…

「…手、出して。」

「……え?」

「良く考えたら俺が巻いた方が早いだろ?
1人じゃやり辛いだろうし。」

立ち上がり先ほどラックが持ってきた軟膏を持ってくると、幾分冷静さを取り戻したのか落ち着いた表情になり少女の手から血が滲み始めているのに気がつくと

「ほら…保健室汚したくないんだろ?」

「あ、うん…。」

言われるがまま差し出された手を取り、ガーゼで滲んだ部分を拭き取ると軟膏を塗り、乾燥しないよう目の細かい布で押さえるとその上から包帯を巻いていく。
動かしやすいように親指を外し、人差し指の横から手首にかけてをチャッチャと巻いていくカミヤをぼんやりと見て、少女は小さな声で呟いた。

「手当て…上手なんですね。」

「…そうみたいだな。」

不思議な回答に少女はキョトンとするがカミヤにとってみれば自分でもなんですんなり出来るのか解らないのだ。
『記憶を失っている』その事を伝えると最初は驚いた少女も納得したらしい、自分の名前は覚えていたので教えると共に、カミヤ自身も治療をしている相手に質問をするのだった。

「そういえば…そっちの名前はなんて言うんだ?」