「………?」
「………。」
作業に集中しているラックはカミヤがその表情の変化に違和感を覚えた事に気がつかないらしい。
カミヤもここで問い詰めても何にもならないので黙っているが…1分程の沈黙は、作業の終了と共に終わりを告げた。
「よし…完了、どっか痛い所まだあるか?」
そう尋ねるラックにはさっきまでの暗い表情は無く、笑顔になっている。
「いや…他は大丈夫、意外と上手なのな、痛みも若干無くなって来てるし。」
感心した様子でラックに感想を述べると、本人もまんざらでもないらしい。
少し照れた様子で器具を片づけに行ったのを見送った後、カミヤは仰向けになって目を閉じた。
これからどうするべきか…あの時に感じた雰囲気や、ラックの反応からしてこのまま何もなかったように、という事にはならないのだろう。
あんな不意打ちみたいな真似、もう二度とできないという事はカミヤ本人が一番よく解っていた。
なによりたとえ自分が記憶を取り戻したとしても、学園長の言うような『力』があるという保証は何処にも無いのだ。
「………。」
仮に今すぐレビィが報復にここへ来たらあっけなく敗北するであろうことは簡単に予想がついた。
魔法が使えず、手負いであり味方になる人物がラックのみの状況では逃げ切れるかどうかも解らない。
この状況をどう打開すべきなのか、目を閉じて頭の中を整理していると不意に額に冷たい感触を感じた。

