-保健室-

「毎回毎回…なんで人を殴るかね……。」

立場上なんじゃねーのかよと思いつつも大人しく引っ張られていた所を見ると、カミヤも今の関係を壊したくは無いようだ。
どの道保健室までの行き方が解らなかった事もあるが、先ほどラックが自分に振り下ろした拳は最初に出会った頃と違う…何処にでもある友人同士のやり取りに他ならなかった。
それを思い返して思わず吹き出すと、それが再びラックに火をつける。

「なに笑ってんだよ?」

「いや何でもない、早く連れてっテー。」

「…なんか引っかかるな。」

のらりくらりとかわされる事で気を削がれてしまったラックは、そのままベッドの上にカミヤを乗せる。

「先生…居ないみたいだな、そこ座って、俺が看るから。」

「出来んのか?」

「舐めんな。」

何処にあるのか知っているのか、戸棚から包帯など必要なものをテキパキと取りだす様子をカミヤは眺めていた。
開いた窓から流れて来るそよ風に煽られ、フードが揺れると隠されていた漆黒の羽が時折顔を覗かせる。
ぼんやりとその様子を眺めていると、視線に気づいたラックが治療器具を抱えて戻って来る。

「何?さっきからジッと見て。」