「そう、たしかそう呼ばれてたし。」

まさかの即答にラックはガックリとうなだれる。
しかしカミヤは事の重大さがいまいち解っていないようだ。

「まぁ気にするなよ…いつかいいことあるさ。」

「そう言ってくれると…ってあんたの事だろうが!!」

「Σうわ!?お前本気で殴りかかってくる…痛!!」

屋上で暴れまわる二人、いつしかラックを覆っていたフードが剥がれてしまう。
だがそんな事はお構いなしに二人はじゃれあっている。

「っは…アッパーカット。」

「ぐわ!?」

いい加減殴られすぎてイライラしたのか、カミヤの右拳がラックの顎に綺麗に当たる。
そして石タイルで出来た床にベタっと胡坐をかき

「しかし…お前あれから変わったな。」

「な…何が…?」

顎を押えて蹲るラックはどうにか目線だけカミヤに向ける。

「だってさ…最初に会った時のお前は他人への気遣いなんかしてなかったじゃん。」

その言葉でラックの動きは再び止まってしまった。
しかし先ほどとは明らかに違う、自分自身考え込んでしまうかのような、そんな風に受け取れる。

「あ……ぅ…。」

今までの事を思い起こすと、どれもこれもとうの昔に忘れていた事だと、ラックは初めて気がついたのだ。