「…キュウ~?」

「ん?あぁゴメンゴメン。」

考え事をしているうちにいつの間にか手が止まっていたらしい。
どうしたのかというような子狐の鳴き声に我に返ったカミヤは再び首筋を撫でるのだが…

「このまま何も食べないとさすがにキツいな…どこか家でもあればいいんだけど。」

「キュッ!」

家という単語にピクっと反応した子狐は腿の上から飛び降りると、ついて来いと言わんばかりにこちらを見ながら尻尾を振る。

「んー…?お前この近くに家がある場所知ってるのか?」

「キュゥイ!!」

任せとけと言わんばかりの鳴き声にカミヤは自分の言葉が解るのかと驚くも、それは無いかと首を振ってそれ以上の追及はしなかった。

人が通らないような、足元を木の根で覆われた獣道に近い間道を歩く。
子狐は時々後ろを向いてちゃんとついて来ているか確認していた。

日がさっきよりも西側に傾いた頃、古ぼけた一軒の家が見えた。