ペッパーのホームは殺風景な部屋の隅にカウンターバーのような机と椅子がある。
そこに座って左手で頬杖を付き、退屈そうだった。
「…お前も振り回されて大変だな。」
そんな彼女は苦笑いで答えた。

ふと、カップに黒い液体が入っているのが見えた。
「…コーヒーか?」
近付いて匂いを嗅ぐとやはりコーヒーの匂いだ。

鼻の奥と頭にツンとくる匂い。
余り嗅ぎ過ぎると気持ち悪くなる。
椅子に座ってまた嗅いでみる。
「美味しいか…これ?
 ってか泥みてぇなコーヒーってどんなんだ?」
あぁ、濃いって事?


よく考えれば、いつからだっけ。
こいつがこんな渋い物や苦い物…大人の味しか摂取しなくなったのは。

気付いたら、まるでオレと入れ代わるようにこんなのを好んでたな…。
まったく、変な兄弟だ。


トントン―
階段を昇る足音がする。部屋の住人の帰宅だ。
一口飲んでみる。
「…にがああぁ~っ。」
「…頭大丈夫か?」
「人間の食べ物じゃない…。」
「安心しろ。お前は人間じゃない。」
「むしろ血の繋がったお前も人間じゃない。」


まだ食道を移動していると思われる黒い液体を、ヤツの持っていた冷たい水で流し込む。