放課後、帰宅しようとする俺を担任が呼び止める。
「岡野。進路希望、早めに出せよ。」
「…はい。」
「まぁ、最終を出せとは言ってない。あくまで希望、また希望調査するからそれまでに決めればいいからな。」
「…はい。」
合わせていた目線を外した。
希望、か。

担任は短く笑うとお前らしいな、と言った。
「とりあえず、進学か就職かだけでもいい。
 先生の希望だが、お前には進学して欲しいがな。」
「進学…。」
「あぁ、お前にはもっとたくさんの世界を見て欲しいんだ。
 まっ、そりゃ先生としての一般的な意見だがな。岡野の未来だ、岡野が決めたらいい。」
また明日な、出席簿をヒラヒラさせて職員室へと向かった。

いつも思う。
先生って職業は大変そうだなって。
いや、関係ないな。

部活へ向かう者達の間をすり抜けるように下駄箱へ向かう。
「泉みっけー!」
脳天気な声が俺を指差す。
「うっさいな、あっちいけ歩。」
肘で脳天気を押し、通過する。
「邪魔だ。色々と。」
「早く帰ろうぜ!」
「分かってる。」
「コンビニ寄るんだろ?」
「…は?俺、そんな事言ったか?」
「そんな気がした。
 行こ、人に声かけられるの嫌なんだ。」

そんなの知ってる。
さっきから目線を感じるから。

微妙に二人の間に距離を作りつつ、そそくさと自転車小屋へ向かった。