ただ普通に恋をして。
普通にデートしたりなんかして。
普通に結婚する。

そんな普通のことが私にもできるのかな?




「笹本先輩なにやってるんスか?」

屋上にある給水塔の上に転がってぼんやりしていると、視界いっぱいに広がっていた空を遮って野田くんが顔を出した。

「…びっくりした」

そう言って体を起こした。
隣を見ると野田くんがちょこんと座っている。
野田くんは中学のときからの後輩で妙に懐かれている。

「どうしたの?野田くん」

「いや〜なんか急に先輩の顔が見たくなっちゃって」

ヘヘヘと笑う野田くんがなんだか可愛く見えた。
しばらく話してから野田くんは教室に帰って行った。

彼の背中を見送るとまた私は背中を地面に預けた。


空が青いな…。


だんだん瞼が重くなってきたときスカートのポケットに入れていた携帯電話が震えた。
携帯電話を取り出すと水野日和(ミズノヒヨリ)の文字。

日和は私の一つ年下の幼なじみ。



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