「それでね、今日カズ君がさぁー」
 チャイムの音が、ケータイに吹き込む言葉を止めた。
「あーごめん、後でかけなおすね」



そう言って電話を切ると立上がりケータイを、今座っていたソファに放った。そうしているうちに、またチャイムの音。



「はぃはーぃ、今行きますよぉ」
誰にというわけでもなくつぶやきながら、玄関へ小走りする。
「どちら様?」
女の問い掛けに、ドアの外から
「宅配便です」
と、返事が返された。



「はぃご苦労様」
言いながら、玄関のドアをドアチェーンを外さず開く所まで開けて、相手を確認した。
ドアを一端閉めチェーンを外し、今度は全開した。
「青井結衣様」(あおい ゆい)
「はい、間違いありません」
「それじゃ、サインお願いします」
そう言って、ボールペンと伝票を差し出してきた。正直印鑑という選択肢がないことに一瞬とまどったが、そのままサインした。
「ありがとうございます」
宅配員がサインを確認して一礼し踵を返した。
「お疲れ様ー」