枝の上で構えているエルメス、左腕のホルスターから50m近いワイヤーが周囲に展開していた。


5年前と違い、ワイヤーの先端には銛状の刃がついていた。


「エルメスっ!」


ワイヤーの射程内に入る直前に、声をかけ、自分の存在を示す。


「おぉ、そっちにいたか。どうだ?見つかった?」

「いんや…全然…、所々に矢は展開されてるんだがな…。肝心の本体が見つからない…」




話している間にも矢が不定期に全方位から飛んでくる。

エルメスはそれを全てワイヤーで叩き落としていた。


「よし、長期戦は不利だ。『ストライクパンツァー』を使う…。援護頼む。」

「しかなさそうだな…。分かった、頼む。」


ワイヤーが全てホルスターに収納され、30cmほど出して垂れ下げる。

眼を閉じ、意識を集中させる。


その間飛んでくる矢を、フィヨルドは必死に防いでいた。


一瞬訪れる沈黙…


「………、そこ!」








ワイヤーを一本の木へと向かって勢いよく放った。


途中ジャマな木をかわし、狙い澄ました木を一直線に貫いた。


すると、ワイヤーが貫く寸前、黒い影が飛び出した。




「はあぁぁっ!」