「本橋、脚速いな…」


ふいに後ろから少し息の切れてる声がして。

やっぱり誰かなんてわかってるけど、振り返ってみる。


「…翔くん……っ」


あたしの手紙を右手に握り締めて…あたしをまっすぐ見てる。


「なんで…逃げんの?」


翔くんが一歩ずつあたしに近づいてくる。


「だって…結果なんてわかってるのに……だから手紙にしたのに…」


「……手紙でも充分伝わったけど…?」


翔くんはそう言ってあたしの手紙の“好き”って文字を指差した。


「…ほんと……?」


なんだか涙腺がゆるんだみたいで涙が溢れた。


「オレ返事していい?」


すごく近くで言われて、あたしの顔から体中の体温が急激に上がってった。


「これ、嘘じゃないんでしょ?」


また翔くんが“好き”の二文字を差した。

あたしはやっとの思いで1回だけ頷いた。


「オレも好きだよ、“早苗”が…」


その瞬間がとても長く感じた。

でも短くも感じた。


「うれしい…っ」


やっと返事をした頃にはあたしの顔は涙とかでぐちゃぐちゃ…。

でも翔くんはそんなあたしの頬に流れる涙を拭ってくれて…嬉しくてまた涙が零れた。


「授業始まるけど、どうする?」


翔くんがあたしを抱き締めてきた。

それだけであたしの心臓はやばいくらいの動悸。


「一緒に…いたいな…」


「じゃ、サボろ」


あたしのわがままに笑って、さらにぎゅって抱き締めてくれて。


「うんっ」


あたしも震えながら腕を翔くんの背中に回して抱き締め返した。

そしたら翔くんと目があってお互いに照れながら笑った。

ゆっくり翔くんの顔が近づいてきて…あたしは屋上で初めてキスをした。

彼の右手にはもちろんあたしの“ラヴ・レター”。




end