死ぬかもな。

「何か言った！？」
口に出した覚えは無いのに詩織が厳しい口調で反応した。
「あぁ！？勝てるっ！って言ったんだよ！！」
ったく…うるさい女だ。
「当然よ！勝つに決まってるじゃない！」
また１つ闇雲の身体に傷が刻まれる。
その傷が思ったより痛くて、思わず疑いたくなる。これって本当なのか？って。夢じゃ無いのか？って。
希望も消えそうになる。むしろ完全に消えてくれれば楽になれるんだろうけど。そんな事を思っていると、「ちゃんと生きてる！？」
口うるさく声をかけてくる。
「うるせぇな！目の前の敵に集中しろよ！」
ありがとな。
全く……嫌になるくらい。
感謝してるさ。
そう思いながらほんの一瞬彼女に視線を向けた。その途端グサリと、固いものが腹に刺さった。
「やっべぇ……！」
痛みを越えた痛みに意識が飛びそうになる。膝が崩れかける。
だが、倒れない。何がそうさせるのか？分からないが皮一枚のところで俺は踏みとどまる。
が、しかしこれは本当にヤバい。ゲームセットが近い。
歯を食い縛って腹に刺さってるヤツの触手を引っこ抜き、思い切り引っ張ってちぎってやった。反動で倒れそうになる。
「いてぇよ。バカ。」
腹の痛みに負けて踏ん張れずそのまま後ろに倒れた。
倒れた途端何にも聞こえなくなった。雲１つ無い青空だけが目に写る。
そんな闇雲にトドメをさすべく触手が一斉に襲いかかる。
闇雲は視界の片隅にそれをとらえていた。
「へっ…」
思わず笑った。
だがその時、
「堂本ぉっ！！」
クロちゃんの触手の動きが止まった。
「やっと来やがったか…。」
彼の滝本の叫び声が合図だったかの様に詩織はクロちゃんの本体に目掛けて飛びかかった。瞬き分遅れた闇雲も飛びかかり２人同時に一撃を叩き込んだ。その瞬間堂本の身体から黒い光りが迸る。それはまるで叫び声をあげているかのように見えた。２人はその光に弾き飛ばされ、詩織は空中で体勢を整え鮮やかに地面に着地した。闇雲はぐったりとして体勢を整えられずに地面に落ちそうになったが、ギリギリのところで滝本が受け止めた。
一方で堂本は黒いモヤモヤの姿のまま地面に倒れている。
さっきまでの激闘が嘘の様に辺りは静まり。クロちゃんに取り込まれた人々もいつの間にか回りで横たわっている。