アンガー・グラッチ・ヘイトレッド


現在。

「はっきり言っとくけどよ!今なら俺は何にだって負ける気がしねぇ!」
闇雲がそう叫ぶ。
「はっきり言わせてもらうけど!アンタのはただの強がりにしか聞こえないから!」
2人はボロボロだった。2人とも服は数ヶ所破れたり、鋭利な刃物で切りつけられたように裂かれているし、服のあちこちに血が滲んでいる。特に闇雲は頭から血を流していて、かなりダメージを受けている様に見える。
「血が目に入って邪魔だぜ。」
「だらしないわね。ボロボロじゃない!」
「オメーもな!」
2人は互いに励まし合うように言葉を交わしながらクロちゃんの猛攻を避けている。が、完全に回避出来ている訳ではなく黒い手が変形した鉤爪が時折体をかすめている。
2人にとって数が10や20は問題無い。しかも鉤爪は叩けば消える。だが、常に間を空けること無く10本単位の鉤爪が襲いかかってくるこの状況では流石にキツい。まさに雨のような攻撃なのだ。傘をさしていても知らず知らずの内に肩だったり背中が濡れている。雨足が強ければ尚更濡れる。そんな状況なのだ。
短期戦が得意な闇雲にとってじわじわと体力を奪われているこの状況は明らかに不利だ。このままの状況が続けば間違いなく闇雲はやられる。そうなれば今まで闇雲が受けていた攻撃が詩織に向かう事になるのは言うまでも無い。そうなればおのずと結末は見えてくる。
2人は敗北の兆しに気づいていた。だが、戦う事を辞めはしない。戦況が秒刻みで悪くなっていても逃げはしない。何故なら敗北の兆しと一緒に勝利の希望も持っているからだ。
今のクロちゃんは2人に一瞬の隙も与える事無く攻撃するために球体の殆ど全ての部分を攻撃するための武器に変えているせいで、人間で言う心臓や脳となる重要部位が露出している。それは滝本の親友である堂本なのだが、2人は少し前に接触しているから彼だと解るだけで、今は人の形をした黒いモヤモヤと化している。
2人は確信していた。アレに同時に攻撃を叩き込めば倒せる。と。だがしかし、攻撃は最大の防御と言う言葉の如くクロちゃんにはその攻撃を叩き込む隙が無い。5秒いや3秒あれば十分なのだ。だけど結局は3秒の隙が生まれる奇跡を待つしか無い。今は奇跡が起こるのを祈りながら耐えるしかないのだ。