不安を吹き飛ばすために無理矢理に叫んだ。「行くぜっ!」と。叫びながらブレーキを思い切り強くかける。ぐっとスピードは落ちるが同時に後輪が暴れだす。その瞬間彼女の腕の力が増す。途端に意識してしまう。が、克服しなければ駄目だ。
力で暴れる車体を無理矢理に制御…ねじ伏せる。
今の俺になら出来る。しなければならない。
アスファルトに黒い後を残しながら暫く横滑りして、だが倒れる事無くバイクはぴたりと止まった。
「いい感じだ。いけるねこりゃ!」闇雲はひひひと笑いながらバイクを降りて、肩からさげているケースから釘バットを取り出す。「チビってねぇだろな?」
その瞬間、闇雲の脇腹目掛けて竹刀の鋭い一撃がお見舞いされる。
「誰に向かって言ってんの?」
詩織は冷たく言い返した。その顔には少しだけ苛立ちがにじんで見えた。
釘バットによって難なくガードされた竹刀を引っ込めて頭上に迫る黒を鋭く睨んだ。
「せっかく俺がプレゼントしてやった竹刀なんだからもっと大事に使ってくれよな。せめてアレを倒すまではさ…!」
闇雲はそう言いながら手にした漆黒の釘バットで頭上のクロちゃんを指した。