「詩織ちゃん!」
このままだと詩織ちゃんはやられる。
どうすればいい!?
武器も無い。力も無い。勇気も無い。
前にも後ろにも動けない。
「滝本君…逃げて。」
一瞬耳を疑った。
今にも泣き出しそうな彼女の顔。
何言ってんだよ?
いつも強気だっただろ?
そんなの詩織ちゃんらしく無いって!
「滝本君っ!」
彼女の必死な叫び声。
鼓動が急激に速くなる。
足がガクガク震える。
「な…」
やっぱり怖い…けどさ。
「何言ってんだよ!!」
俺は詩織ちゃんに向かって走りだす。
足がもつれて転びそうになる。
だけど止まらない。
「好きだぁー!」
詩織ちゃんは目を丸くして俺を見る。
どうなるかなんて分からない。
ただ、いつの間にか大好きになっていた彼女を守りたい。
それだけ。
ためらい無くクロちゃんの群れに突っ込む。
詩織ちゃんに向かって手を伸ばす。
そして、確かに彼女の手を掴んだ。そのまま引っ張り抱き寄せる。
竹刀が落ちた音。
視界から光が消えていき完全に闇になる。
だけど怖くは無い。
一人じゃ無いから。