俺はただ頷き、詩織ちゃんの背中を追った。
詩織ちゃんはいつ現れるか分からないクロちゃんを求めて、また宛も無く夜道をさ迷い続ける。
と、突然詩織ちゃんが振り返る。
「滝本君の学校ってどこ?」
「え?どうしたの急に。」
詩織ちゃんは腕を組み、右足で地団駄を踏む。
「どーしたもこーしたも、クロちゃん探しよ!学校って人が沢山集まるでしょ?その分クロちゃんも集まりやすいかな。って思ったの。」
「あぁ、なるほど。」
詩織ちゃんは軽くため息をつく。
「本当に分かってるの…?」
「分かってるよ。負の感情ってやつが集まりやすいんだろ?」
「…、まぁ…いいけど。学校に案内してよ。」
今度は逆に俺が詩織ちゃんの前を歩き、さっき行ったばかりの学校を目指す。
近づくに連れてさっきの嫌な思い出がよみがえってくる。
バカな…俺。
校門が見えた。
近くの街灯のポールに寄りかかってうつ向いている俺の幻が見える。
「カッコ悪っ…。」
頭の中で呟いたはずなのに、口が勝手に動いたようでそれに気づいた詩織ちゃんが、
「何か言った?」
俺は慌てて、
「一人言だよ!」
「ふーん。まぁいいけど。ところでさぁ…。」
校門に真っ直ぐ歩いていく詩織ちゃんの呆れ声。
「な、何?」
「滝本君の学校って随分無用心なのね。」
「は…?」
詩織ちゃんの目線の先には校門が、
「門開けっぱなしってと゛ーかしてるでしょ。」
「あー…うん。」
おかしい…来たときは門は閉まってたはず。という事は俺が居なくなってから誰か来て、門を開けたってことだ。
「それとも頭の悪い人でも中にいるのかな。」
詩織ちゃんは少し楽しそうにそう言いながら、門を越えて校庭を校舎に向かって真っ直ぐ歩いていった。
俺の空耳か、詩織ちゃんは鼻歌を口ずさんでいた気がする。

どーいうわけか玄関の戸も校門同様に開いていた。ただの閉め忘れだとしても、戸が全開なのはいくら何でも変だ。
「玄関の戸まで開きっぱなしじゃない!」
詩織ちゃんはどうなってんのよ!?という顔をしながら校舎に入って行った。