アンガー・グラッチ・ヘイトレッド

8時を1分と数十秒過ぎて学校の校門前に到着した。
手紙の人物は予想に反してまだ来ていない。
「自分から時間指定したくせに。」
とも思ったけど逆に好都合かも知れない。あっちの方が遅いから俺は遅刻してない様に見えるし。
乱れた制服を整えて…
これで完璧。
近くの街灯のポールに寄りかかって相手を待つ。
時折吹く風が汗をかいた体に肌寒さを感じさせて、頭が冷えて、ふ、と思う。
「あの手紙…誰かのイタズラ?」
そうだよな。と思う。
こんなうまい話が易々と転がりこんで来るわけ無いよな。
気持ちは一気に冷める。
その不信感を裏付けるかの様に10分たっても誰も来ない。
ため息。
帰ろうかな。という気持ちと誰がこんなイタズラしたんだ?という怒りが湧いてくる。
心の中に太陽の様に輝いていた希望の光はロウソクの火程度にまで落ちた。
心の中でロウソクの火を見つめているとぼんやりと誰かの顔が浮かんでくる。
「詩織ちゃん…。」
ため息混じりに出てきた言葉。
ちょっと早いけど、公園に行こうかな。
俺にはやらないといけないことがあるんだ。
それはクロちゃん退治。
こんな事をしている場合じゃ無い。
「そうだよな。」
無理矢理に理由を付ける。「うん。」
自分を納得させるにはこれしか無いから。
さっきとは比べものにならないくらい重い足取りで公園に向かって歩く。
こんな事ならあんな手紙、無視しとけば良かった。
「ったく!一体何処の誰だよ?人に淡い希望を持たせて、がっくりさせて影で笑ってやがるヤツは?人間失格だろ?こんな下らない事してないで、人のためになることをしやがれ!」
頭の中に浮かぶぼんやりとした犯人像に言うだけ言ってやってちょっとすっきり。
どれもこれも悪いのは全部クロちゃんのせいだ!
そんな事を思いながら公園のブランコに座って一人揺れていた。