アンガー・グラッチ・ヘイトレッド

何となく周りに誰もいないことを確認してから、足元に落ちた手のひらサイズの便せんを手に取りすぐさま鞄の中にしまう。
少し心拍数が上がった。
これは…いわゆる、ラブレターというものでは無いのだろうか!?
いつもならすぐ横に堂本がいるわけで、ヤツが休んでくれたことは不幸中の幸いというものだ。
寄り道なんてしてる場合じゃない。真っ直ぐ帰ろう。

部屋の鍵が掛かっている事を二回確認して、コタツテーブルの上に置いたカバンのファスナーをゆっくりと開けた。流行る気持ちを押さえながらわざとゆっくり便せんを取りだして、深呼吸をして手紙を開く。
B4サイズの白地に薄い黒の羅線が引かれている一般的な手紙用紙に、ボールペンで書かれた綺麗な字。
頭のなかで何度も読み返す。
「貴方と話したいことがあるので、8時に高校の正面門の前でお待ちしてます。」
声に出して読んでみたけど告白って感じの文章じゃない。
想像していたのと大分違う。何と言うか、
固い。
凄く真面目な子なのだろうか?だけどそれにしては時間帯が遅い気もするし…。
というか、これだと女か男なのかさえ分からない。
「あーーダメ。」
いくら考えても分からない。
大の字に仰向けになって目をつむる。
少し休もう。
今夜は色々と忙しいのだ。