アンガー・グラッチ・ヘイトレッド

コンビニの看板の明かりが見えた。
すぐにコンビニの駐車場に座っている人影を発見。
見たところ若いカップルみたいだ。男の方は機嫌が悪いらしく地団駄をふんでいる。
「(怪しいヤツを見かけたら視線を送るんだったな。)」
俺は詩織ちゃんの言葉を頭の中で確認しながら、駐車場の脇に自転車を停めて男の方にちらりと視線を送る。
詩織ちゃんの教えてくれた事は正確で男は直ぐ様俺の視線に気付き睨み返してくる。俺はわざとらしく視線を反らしコンビニの店内に入った。
「(何も買わないで出てくのは不自然かな…?)」
俺はポケットの中に小銭を確認すると、アイスを並べてある棚に移動した。
俺が食べるのに六十円の棒アイス。詩織ちゃんのために百二十円のカップアイスを買って店から出た。
「おい!」
来た!
「てめぇ、俺達のこと見てただろ!」
詩織ちゃんの言うとおりだ。
「いや、見てないと思うんだけどなぁ。」
「嘘つくな!」
男の異常な怒り方に連れの女が止めに入るが聞く耳を持たない。
「(あとはコイツを詩織ちゃんが待ってる公園まで連れていくだけだ。)」
男はコンビニの店内をチラと横目で見ると、
「ここじゃ場所わりぃしよぉ。ちっとついてこいよ。」
「それならさぁ。公園は嫌だなぁ。この時間なら誰も助けに来てくれないだろうし!」
男に自分が公園まで誘導しようとしている事を精一杯悟られない様に言ったつもりだ。
男は一瞬俺を眉間にシワを寄せて見つめたが、
「なら公園にしようぜ!逃げんなよ!」
「(誘導成功、と。)」
男に言われるままに連れて来られたように振る舞いながら、公園まで来ると詩織ちゃんを探した。