「だ、大丈夫ですか?」
「いったいわね…。」
その人は立ち上がりながら、
「いきなり飛び出して来るってどーいうことよっ!」
聞き覚えのある声。
「詩織ちゃんっ!?」
「え?滝本…君、だっけ?」
微妙だったが初めて名字で呼んでもらえた。
「遅いから心配したよ!」
「心配って…十分過ぎたくらいじゃない…滝本君って意外と細かいのね。」
詩織ちゃんは携帯の時計を見ながら言う。
「いや細かいって言うか場合が場合っていうか。クロちゃんと戦ってるのかと思って心配したんだよ。」
詩織ちゃんは僕を上目遣いに口に笑いを含みながら、
「大体心配なんていらないわよ。今まで自分一人で戦って来たんだから。むしろ今度からは滝本君を守りながら戦わなきゃいけないんだから、そっちの方を心配してよ。」
「…。」
確かに今まで一人で戦ってきた詩織ちゃんにしてみれば俺はお荷物以外の何者でも無い。
昨日だってクロちゃんを目の前にした俺は、仰向けに固まったまま何も出来なかったわけだし。
「まぁいいわ。滝本君の言う狩りをはじめましょ。」
詩織ちゃんは俺とぶつかった時に落とした木刀を拾うと、夜道をさっさと歩いて行く。
「あ!ちょっと!」
俺は慌てて詩織ちゃんを追いかける。
「今日は作戦を考えて来たの。」
「作戦?どんな?」
「おとり作戦。」
「へぇー…スゴいね…。内容は?」
「滝本君がおとりになってクロちゃんを誘きだして、私が倒す!簡単でいいでしょ?」
そう言って詩織ちゃんは笑顔を見せる。
「やっぱり俺がおとりかぁ。」
「当然でしょ?滝本君じゃ倒せないんだから。」
彼女はさらりと言うと歩いて行く。