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俺と詩織ちゃんは駅から少し離れた小さな喫茶店にいる。

堂本と学校の帰り道を歩いていたら知らない番号からのショートメールで、[藍原詩織です。昨日の夜の事覚えてますか?今すぐ駅前に来て欲しいんだけど?]とメールが送られてきたのだ。
メールを見て一瞬で昨日の彼女からだと気づいた俺は急いで駅前に向かった。と、いうわけだ。
昨日の出来事の最後に詩織ちゃんの涙を見た俺はなんとも気まずい感じを胸に引っかけながら、詩織ちゃんのオススメのオリジナルブレンドコーヒーを飲みながら彼女の様子を見る。
昨日は辺りが薄暗くて彼女の顔がはっきりと見えなかったけど、今日は
「それにしても!お詫びとかマジでいいのに!昨日のこととか!俺本当に全く気にしてないからさ!むしろラッキー!みたいな?」
昨日の今日だ。嫌でも顔に出てしまう。
「別にいいじゃない?たまたま私がこのお店に来たくて、ついでに昨日のお詫びをする。ってことなんだから。」
詩織ちゃんはどうしていきなり俺を殴ってくれたのか?
わけを知りたいが半分。知りたくないが半分。
「はーなるほど。ってか本当は俺が助けてもらったお礼するはずだったんだけど。まーそれと今日の作戦会議ね。」
「作戦会議って何よ?」
「今日の作戦会議だけど。」
「は?何言ってるの?」
詩織ちゃんの顔が曇る。
「いやほら!お礼がしたいって言っただろ?それに昨日のお詫びしたいんなら、その…クロちゃんってヤツをやっつけるのを手伝わさせてくれないかなって。」
「昨日アタシが言ったこと忘れたの!?」
静かな店内に詩織ちゃんのあらがった声が響き、カップの中のコーヒー僅かに揺れた。
詩織ちゃんは夢中になると周りが見えなくなるタイプみたいだ。
俺は店員の様子を伺いながら声を小さくして話す。
「勿論危険は承知だよ。だけど、クロちゃんってやつを知った以上無視するわけにはいかないんだよ!あんな危ないやつ一刻も早く退治した方がいいに決まってるし。」
「はぁー。」
詩織ちゃんはうつ向いて大きなため息をつく。