滝本は駅前のコインロッカーの前で右手に携帯を握りしめながら落ち着かない様子で辺りをキョロキョロとしている。
僕の尾行を警戒しているのだろうか?
疑い深いヤツだ。
そんなことを思いながら滝本と女のツーショット写真をとってやろうと、携帯のカメラのレンズを向けてスクープの瞬間を今か今かと待ち望んでいた。
と、滝本の視線が一点に固定される。
視線の先を辿ると僕たちとは違う高校の制服を着た女子高生が真っ直ぐ滝本に向かって歩いてくる。
「あの制服は黒埼高校の…。」
ちょっと前にそこの生徒がでかいバイク事故を起こした事で少しの間話題になっていたっけ。
そんな事よりあの女。
色白の肌。長めの黒髪に軽くパーマをかけてウェーブがかっている。
はっきり言って滝本には勿体ないくらい可愛い。
何で滝本のヤツに…。と、軽い嫉妬感を抱きながら二人の様子をうかがう。
女の方は滝本のヤツにペコリと丁寧にお辞儀なんかしている。
一方の滝本は頭を掻いてみたり、ポケットに手を出し入れしてみたりと落ち着きがない。
「おいおい…滝本…緊張してるが見え見えだぞ…。」
親友として…悲いものがある。
それにしても今時お辞儀なんかして挨拶する女の子は珍しい。マジにどっかのお嬢様じゃ無いんだろうか?だとしたら一体どこで知り合うんだよ。
と、女の子の後ろ姿を眺めながら色々と妄想を巡らせる。
落ち着きが無い滝本を気遣ってか、女の子の方が場所を変える提案をしたみたいで二人は歩き出した。