いくら両思いだからって。

いくら、それが現実だからって。

こんなかっこいい、魅力的な誠さんが相手じゃ不安。


「…衛生士さんたち、みんな美人だし……誠さん目当ての患者さんも多そうだし…」


高校生のあたしなんかじゃ太刀打ちできないような相手が出てきたら、と思うと今から胸が締め付けられる。


「ならないよ」


「…え?」


昨日みたいにBGMに静かな音楽が流れる診察室で、誠さんの声はやけにはっきりと聞こえた。

こんなに至近距離にいれば当然なのかな。


「たとえ、理子ちゃんが虫歯にならなくてここに来なかったとしても僕は他の人を恋愛対象には見ない」


すぅっと心に響く誠さんの声。

誠さんの言ってることが嘘なのか、本当なのかはわからない。

でも、本当だと信じたい。


「へへ、うれし…っ」


言葉は最後まで言えなかった。

唇を塞がれてしまったから。


「…理子ちゃんが虫歯になってくれてよかった」


歯医者失格だな、って誠さんは苦笑いした。