言ったら誠さんを困らせる気がして。


「でも、なに?」


目を泳がせると誠さんの手で頬を包まれた。


「言って」


さっきと同じ有無を言わせない声。

表情は優しいのに。


「……患者じゃなくなったら」


「うん」


「ここに来る理由、なくなっちゃう」


「そうだね」


「…誠さんに会えない」


「……」


「そんなの、やだ」


言っていて、これじゃまるきりこどもだと思った。

会えないから、治療を拒む、なんて。

でも、それぐらい誠さんに会いたいと思うから。


「理子ちゃん、これからは君は僕の彼女なんだよ」


誠さんはゆっくりとした口調で話す。


「…はい」


「ここじゃなくたって、会う場所はいくらでもあるよ」