男に掴まれた腕が痛い。
みんなからの視線が怖い。
「あ、あの・・・」
「あ?」
ずっと開けなかった口があやっと開く。
「どこに行くんですか?」
「どこでもいいだろ」
少しだけ振り返って、ニヤリと笑った男。背筋がゾクっとした。
―――そのとき。
ずっと止まらず早足で歩いていた男が何処か一点を見つめ、足を止めた。不思議に思った私は、男の視線を追った。
「・・・離してやれよ」
―――スラっと伸びた身長。
微かに揺れる茶色の前髪。
うっすら笑みが浮かべられた唇
…私は一瞬にして視線の先の人物から目が離せなくなった。
