助けてもらった後、彼は「気をつけてね?」と笑顔で言うと、
すぐにあたしに背を向けて歩き出した。
「はい。・・・・あっ・・・!」
彼の名前、せめてそれだけでも知りたくて、
恐怖から抜け出した直後の震える声を振り絞って問いかけた。
「すみません、お名前はっ―――・・・」
「え、おれ?」
「はっ、はい!!」
一回振り返って、彼はニッコリと笑った。
「2-Dの拭石」
それだけ言うと、手をヒラヒラさせながら廊下を再び歩き始めた。
(2年生って事は・・・あたしよりも年上かぁ・・・)
彼の背中を眺め、あたしの鼓動は高まるばかりだった。
――――
「・・・ってかあたし一回トイレ行って来るね」
こんなことを思い出していると、さっき納まったハズの頬の熱が蘇ってきた。
「あ、うん。顔赤いけど・・・熱でもある?だいじょぶ?」
「うん!だっ、大丈夫!!」
そう言って一人で教室を出た。
「わ・・・」
やっぱり廊下を歩いていると周りからの視線が痛い。
