「これでやっと仕事が終わるな」
「千聖……」
未央は千聖のシャツをギュッと掴んだ。
「大丈夫だ、未央。俺は死なない。絶対に生きてここを出る。おまえを連れて。だからおまえはドアの所で待っていろ」
肯いた未央が離れる。
それを確認して、千聖は神部と向かい合った。
「いい目だ―― 何をも恐れない、強い輝きを宿している。だが、この手から逃れる事は出来ないよ。私は受けた仕事は必ずこなすのだから」
「それは今までの話しだろう?今回はそうは行かない」
「ナイフで心臓を一突きがいいか?それとも、その首についた赤い筋を増やしてやろうか?」
「どっちもゴメンだな」
答えるや否や、神部の拳が真っ直ぐに向かってくる。
スルリと身を躱し、素早くその腕を掴んで足を払う。
ドスンと音がして床に倒れた神部を、押さえ付ける。
しかし、途端に弾き飛ばされて床に転がった。
直ぐに跳ね起き、身構えると神部が笑った。
「さっきとは随分違うじゃないか。わざと手を抜いていたという事か」
「ああ、実力の半分も使っちゃいなかったさ」
「強気だな。それならこっちも本気でいくか。君のようなヤツは、もっとその成長を見ていたかったのだが……仕方ない。仕事だ」
呟いた神部へ自ら踏み込んで繰り出した拳が、頬へヒットする。
が、タイミングを合わせて顔を右へ背け、神部はニヤリと笑った。
手応えの無さに、しまったと思った途端。
空かさず左へ身を翻した神部に背中を押されていなされる。
壁際で足を踏ん張り、振り向いたと同時に、何かが首に触れたのを感じた。
直後――
「クッ――!」
身体ごと壁へ叩きつけられ、千聖は呻き声を上げた。
