「確かにお嬢さんの言うとおりだ。私は心から千聖を愛していたよ。可愛い一人息子だと思っていた。本当に可愛かった。目の中に入れても痛くない存在だった。だけどそれが自分の血を分けた子では無いと、別の男の子供だと分かった瞬間、憎しみに変わったんだ。千聖はこの世で最も存在していて欲しくない対象になったんだ。何故なら千聖は、あの男と香里が愛し合ったという証拠に他ならなかったから。『可愛さ余って憎さ百倍』という言葉を知っているかね?まさにそれだよ」
拳を握り締め、未央が叫ぶ。
「だけど!もしそうだったとしても、そんなのは千聖のせいじゃない!」
「ああ、分かっているよ。けれども千聖はあの男の子供だ。何がどうあっても、生きていて欲しくない存在なんだ」
「そんなに……俺が憎いんだ?」
冷たく言い放った裕一に、俯いていた千聖が呟いた。
「そんなに俺を消してしまいたいんだ?」
切れた口元を袖口で拭って、フッと笑う。
「だったらやればいい!出来るかどうか、やってみればいい!出来るわけが無いんだから !!」
「千聖――!」
「たとえ俺をこの世から消したって、俺が存在した事実は残る。あんたの胸の中に一生残るんだ!それに俺は消えない。生き続ける。絶対に !!」
名前を呼んだ未央を押し退けて立ち上がり、千聖は真っ直ぐに裕一を見つめた。
「大した意志の強さだな。佐々木隆利の遺産は、しっかりとおまえの物になっているという事か。だったら試してみよう。おまえの意志が何処まで通じるか。神部!」
退いた裕一の前に、煙草を投げ捨てた神部が進み出る。
神部は自分の方へ視線を移した千聖と目を合わせると、ニヤリと笑った。
