まずは話しのきっかけを作らなくてはならない。

 ああでも無いこうでも無いと思考を巡らせた結果、響はさっき見た映画の話しをすることにした。

「映画、どうだった?」

「どうって?響はどう思ったの?」

「俺?」

 逆に問い掛けられて考え、まずは当たり障りの無い返事をしておく。

「俺は―― まあまあだったかな……」

「私はとても面白かったわ」

「そ、そうだよな。面白かったよな」

「だけど……」

「だけど?」

「今一だった部分もあるわ。主人公が好きな女性に気持ちを打ち明けたとき――」

「うん、あの台詞ちょっと臭かったよな」

「台詞は良かったんだけど」

「臭くて良かった……」

「そのあとのヒロインの表情が良くなかったわ」

「涙流して喜んで……」

「笑ってたのが」

 未央の視線にドキッとして、響は黙り込んだ。