「ごめん―― 怒鳴ったりして悪かったよ。でも、もう俺に関わらないでくれ」

 理由の分からないその言葉に、未央は立ち止まって振り向いた。

「どうして?どうしてそんな事言うの?私のこと好きって、愛してるって言ってくれたじゃない。なのにどうして急に――」

 問い詰められ、千聖はまた視線を逸らせた。

「何かあったのね……何があったの?ね、何があったの !?」

 未央が千聖の両腕を掴んで、顔を覗き込む。

「お願い千聖、私に話して。私、まだ子供だけど千聖のために何かしたいの。自分に出来る事なら何だってしたいの」

 唇を噛んでいた千聖は、必死に訴える未央の言葉に静かに顔を上げた。

「俺のために何かしようなんて、思わない方がいい」

「何故?私、千聖のことが好き。だから何だってしてあげたい。なのに何故それがいけないの?好きな人のために何かする事はいけない事なの?」

 一瞬微笑んだ千聖に、未央はドキッとした。

 その微笑が途轍もなく寂しそうに見えたのだ。

 暫く黙って、千聖はまた口を開いた。

「俺の父親がそのために死んだから……俺のためにしようとした事が原因で、殺されたからだ」

 未央は目を見張った。

「それって石の事?」

「そうだ……俺の両親は、俺のために七つの石を残そうとして殺されたんだ。石を手に入れようとした奴らに」

「そんな……」

「そして今日も―― 両親を殺した奴の事を俺に話そうとした永池秋江が、俺の目の前で撃たれた」

「千聖……」

「秘密を話そうとしたばっかりに……。彼女を撃った奴は、俺が彼女に接触して話しを聞き出そうとした事に気付いて……それで……」

 千聖は両手で顔を覆い、その場に座り込んだ。