「うわぁあ!綺麗!」

「しっ――!大きな声出すなよ」

 途端に周囲の人たちの視線が集まり、未央はペロリと舌を出した。

 中央美術館は中央図書館と共に、いつか未央がリトルを回収した中央公園の一画にある。

 日曜日ともなれば公園は親子連れで賑わったが、さすがに美術館は大人の雰囲気という感じで静かだった。

「ごめん、つい……だってホントに綺麗なんだもん」

 もう一度ステンドグラスを見上げた未央に千聖がフッと笑う。

「あんたこういう所、向いてないな」

「かもしれないね」

 千聖に向かって微笑みながら階段を上がる。

 途端に踏み外してつんのめった。

「きゃっ――」

「危ない!」

 咄嗟に隣に居た千聖が抱きかかえる。

「ああビックリした―― ありがと」

「『ビックリした』じゃないよ、全くあんたは―― フッ……クックックッ………」

 胸を撫で下ろした未央を目にして、千聖はふいに笑い出した。

「千聖?」

「クックックックッ……」

 笑いを噛み殺しながら片手を口に当て、待ってくれというふうにもう片方の手を上げる。

 そしてそのままクルリと向きを変えて、明るい光の差し込んでいる中庭に続くドアに急ぎ足で向かい外へ出た。

 未央も急いで後に続いた。

 いかにも美術館らしい洒落た形のベンチに腰掛ける。

「ハハハハ……フフフ………腹が……腹が痛い……」

「そんなに笑わなくても……」

 不満を口にしながらも、未央は久し振りの千聖の笑った顔が嬉しかった。

 陽射しが暖かい。

 風が心地よい。

 未央は空を見上げると大きく深呼吸した。