(死んだ?赤峰が首を吊って?)

 にわかには信じられなかった。

 とても自殺するような人とは思えなかったからだ。

 それに、【エターナル・グリーン・アイビー】が戻って来るのを待っていたはずだった。

 記者が続ける。

「でもこれでまたここは幽霊屋敷に逆戻りか」

「何ですかそれ?」

 首を傾げて問い掛けた未央に、記者は屋敷の方へ目をやった。

「いやね、この屋敷は結構いわく付きでね。最初にこの建物を造った人は事故で亡くなったんだけど―― その後ここを買い取った人は、最初の人が屋敷の中で事故死。その次の人が病死。そしてその次も事故死。それから赤峰が住むようになってからも、庭に侵入した男が犬に噛み殺された。そして今度の自殺。何かあるって噂がたっても当然だろう?」

「え……ええ、そうですね」

(犬に噛み殺されたって……ケルベロス?)

 未央は頬に手を当てた。

 その様子が、悪戯を考えているように見えたのだろう。

「あのさ、言っておくけど、心霊スポットだなんて言って友達と忍び込んだりしちゃ駄目だよ。噂を信じるわけじゃないけど、何かあったら大変だからね」

 記者は未央の顔を覗き込むようにして笑うと、屋敷から出て来た警察官の方へ走って行った。

(死んだ……あの人が……)

 ポケットに入れた【エターナル・グリーン・アイビー】を握り締める。

(じゃあパパの絵はどうなるの?もう取り返せないの?パパ――)

 未央は門の鉄格子の遙か向こうに見える、今は主の居なくなった赤峰の屋敷をじっと見つめた。