「『これはおばさんと、響君だけの秘密なんだけど―― おじさんは鹿や、ウサギなんかが入った宝石を集めてるの。それは全部で七つもあるんだって』おばさんはそう言った。それで俺、そんな鹿やウサギが入るような大きな宝石なんか買うからお金無いんだと思って、うちに帰って母さんに話したんだ。そしたら『よその家の事になんで首を突っ込むの!』ってメチャメチャ叱られて……だから今でも覚えてるんだよ」

(ウサギの入った石――。それが米村邸で見たあの石だとしたら……。繋がる。千聖のお父さんと影の石を持つ四人!)

「でもさあ、未央。向坂のおじさん達って、よっぽど運が悪かったんだな」

 響の言葉に、未央は顔を上げた。

 茶色の髪を揺らして首を傾げ、響を見る。

「だってよ、この事故で死んだのって、向坂のおじさん達だけだって書いてあるぜ」

「えっ――」

「避難用ボートから落ちた奥さんを助けようとして、二人とも溺れたって」

「それって誰が見てたの?」

 思わず響の方へ身を乗り出す。

「同じボートに乗ってた人……っとあった。影山って人だ」

「影山……」

(あの四人の中の一人だ。影の石を持っていた人が、千聖の両親の最後を見ていた。もしかしたら残りの石を持っている人も同じボートに?)

 新聞の紙面にもう一度目を落とす。

 そんな未央の様子に、響は顔を覗き込んだ。

「未央、顔色悪いぞ。どうかしたのか?」

「うぅん何でも無い。ちょっと……ショックだっただけ」

 声を掛けて来た響に無理やり微笑み、未央は言葉を続けた。

「千聖がどんな気持ちで、この知らせを聞いたのかと思うと……」

 そこまで答えて、未央は黙り込んだ。

 頭の中に、再び千聖の言葉が浮かんで来たのだ。