DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~

「さてと―― 明日は仕事も休みだし、帰ってビデオでも見ながらゆっくりビールでも飲むとするか」

 独り言を口にして、運転席に座る。

 煙草を消してドアを閉め、ロックしようとした途端――

 助手席のドアが勢い良く開いた。

 そして、まるで電車に駆け込み乗車でもするように、見た事もない若い女が乗り込んで来た。

 当然のように男は声を上げた。

「えっ――?」

「車出して!早く!」

 その女が後ろを振り向きながら叫ぶ。

「出してって―― あんた誰?」

「いいから早く!私を殺す気?」

「殺す !?」

 思ってもみない言葉に驚いて声をあげた瞬間、パン!と音がして後部座席横の窓ガラスが吹き飛んだ。

「な―― 何だぁ !?」

「早く!あなたを巻き込む気は無いから!」

「もう十分巻き込まれてるよ!」