高い塀の上から黒い人影がフワリと舞い降りる。
男はリバーシブルの上着を脱ぐと、素早く裏返して袖を通した。
それから革の手袋を外し、ゆっくり歩きながら手の中の石を指で摘んで街灯に翳した。
直径4センチ程度のその黄色い石の中に、立派な角を生やした鹿のような影が見える。
「【ゴールデン・ディアー】か。なるほど。うまく名付けるもんだ」
ニヤリと笑ってズボンのポケットにしまい、煙草に火をつける。
「それにしても今日はずいぶん楽だったな。あんまり楽すぎて物足りないくらいだ。せめてもう少し緊張感がないと、仕事をした気にもなれない」
贅沢な悩みを口にしたその時、つい先ほど出て来た建物の方がにわかに賑やかになって、男は肩を竦めた。
「やっと気付いたってか?そんなんじゃネズミ一匹捕まえられないぜ。だいたい本物と偽物をすり替えて、偽物に物々しい警備を付けて俺の目を誤魔化そうなんてちゃちな真似、誰が考えたんだ?そんな小細工にこの俺が引っかかるかって言うんだ」
煙草を銜えたまま身軽に金網を蹴って、突き当たりのフェンスを越える。
そして空き地に停めてあった一台の車に近付くと、男はポケットからキーを取り出した。
男はリバーシブルの上着を脱ぐと、素早く裏返して袖を通した。
それから革の手袋を外し、ゆっくり歩きながら手の中の石を指で摘んで街灯に翳した。
直径4センチ程度のその黄色い石の中に、立派な角を生やした鹿のような影が見える。
「【ゴールデン・ディアー】か。なるほど。うまく名付けるもんだ」
ニヤリと笑ってズボンのポケットにしまい、煙草に火をつける。
「それにしても今日はずいぶん楽だったな。あんまり楽すぎて物足りないくらいだ。せめてもう少し緊張感がないと、仕事をした気にもなれない」
贅沢な悩みを口にしたその時、つい先ほど出て来た建物の方がにわかに賑やかになって、男は肩を竦めた。
「やっと気付いたってか?そんなんじゃネズミ一匹捕まえられないぜ。だいたい本物と偽物をすり替えて、偽物に物々しい警備を付けて俺の目を誤魔化そうなんてちゃちな真似、誰が考えたんだ?そんな小細工にこの俺が引っかかるかって言うんだ」
煙草を銜えたまま身軽に金網を蹴って、突き当たりのフェンスを越える。
そして空き地に停めてあった一台の車に近付くと、男はポケットからキーを取り出した。
