DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~

 来る時に通ったのとは逆の手順で庭に降りる。

 あの大きな木に向かって走り出した未央の後ろで、バタバタと人の気配がした。

「いたぞ!あそこだ!」

「逃がすな捕まえろ!」

 騒がしい声の直後、不意に響いたのは大きな破裂音。

 未央は耳を疑った。

 それは生まれてこの方聞いた事も無い音だったが、紛れも無く銃声と思われ――

「嘘……こんな物一つにそこまでする?」

 慌ててワイヤーを伝ってフェンスを越える。

 門の方で車のエンジンの音がしている。

 急いでローラースケートを履き、アスファルトを蹴って未央は暗闇の中へ走り出した。



…☆…