DOUBLE STEAL ~イシヲモツモノ~

 もう一度周囲を見まわす。

 ターゲットのありそうな場所は直ぐに見つかった。

「これね」

 壁際に置かれた大きな机に歩み寄り、一番下の引き出しをそっと引いて中をライトで照らす。

 透明なプラスチックのケースに入ったその書類は、予想どうりそこにあった。

「標的確認。だけど何故鍵を掛けていないのかな?そんなに大切な物じゃないって事?だったら何故……」

 少し考えてフッと笑う。

「ま、いいかそんな事。それよりさっさと終わらせちゃお」

 呟いてプラスチックケースに手を伸ばした瞬間、自分の手の甲に赤い光線が映ったのが目に入り、未央は「あっ――!」と声をあげた。

 途端にベルの音が鳴り響く。

「しまった!こういう仕掛けだったのね」

 未央は素早くケースから書類を抜き取りポシェットに入れると、『書類は回収させていただきました』と書かれたカードを置いて、急いでベランダへ飛び出した。