「モモ、ちょっと待ってよ~一緒に帰ろうよ~」

「やだよ、もう中学生なんだから、一人で帰れるよ!」


そう言ってモモは、スタスタと先に帰ろうとする。

小学生の頃は、いつも一緒に帰ってたのに…


「一人じゃ危ないじゃん…」

少し距離をおいて、僕は後からついて行った。



「もう、ついてこないでよ!レンがいると困るの。これからデートなんだから!」



なんだよそれって、しつこく問いただしたら、クラスで一番人気の男子と、図書館で勉強するんだって言い出した。


いつの間に、そんなことになってんだよ?
昔はなんでも話してくれたのに…

前からこいつはモテてたけど、小学生特有の、好きな女の子をいじめちゃうみたいなのが多くて、いつも僕に泣き付いてきてたのにな。



でも、それ以前に、モモはあいつが好きだって思ってたのに、何で急に心変わりしたんだろ?





「ねぇ、最近はビトとメールしてないの?
去年の夏は、あんなに仲良くしてたじゃん…」


幼馴染みのビトは、アメリカに住んでいる。
僕たちの両親と、向こうの両親が親友同士ってのもあり、毎度サマーホリディの時期になると、ビトのお母さんと一緒に日本に帰国し、うちに遊びに来る。

ビトはモモの事が昔から大好きみたいで、会えない時も、毎日メールやチャットで話してるってきいてた。


モモもまんざらでも無いみたいだったのにな…


「ビトは毎日会えないじゃん。
それに、この前モモはガールフレンドだってはっきり言われたし…」



ちょっと落ち込み気味でモモは足早に歩きながらそうつぶやいた。





馬鹿だな、向こうではガールフレンドって彼女って意味だよ。





そう言おうとしたら、図書館についてしまって、いい加減帰ってよと怒鳴られた。



図書館の入口の向こうには、背の高いイケメンの同級生がモモに手を振っている…


あいつはそれに気付くと、さっきまでとはまるでちがう笑顔を作って彼に走よって行った。



なんだよ、あんな奴たいした事無いじゃん…
ビトの方がかっこいいのにな…



そんなことを思いながら、渋々僕は一人で家に帰った。