不覚にも見とれた笑顔はどちらのものにたいしてなのか分からなかった。


裏表関係無しの笑顔にときめいたことだけは確か。


「二人とも…狡(ずる)いよ…」


あたしの泣きそうな声が空に消えていった。




フェンスに寄り掛かって空を見上げればまだ雲一面。


まるで………


「今のあたしの心を映してるみたい…」


だ。


魁迩と絢があたしの心の中に居座って…あたしの気持ちが揺れている。


そんな状態を天気で表すなら今がピッタリのような気がする。


「今まで…何があっても魁迩だけのハズだったんだけどなぁ…」


小さなあたしの独り言は誰にも聞かれることなく、消えた。




2限目が終わり教室に戻ればクラスメートが声をかけてくれた。


授業が始まる時には先生にまで心配の声をかけられた。


普段真面目な人がサボるとこうなるんだ…と他人事のように感じたのだった。




授業中、窓際なので空を見上げれば小雨だが雨が降っていた。


その雨は…あたし達の何かを変える。


そんな予言のような雨に感じた。