「絢………いつも思ってたんだけどなんで抱き着くの?」
絢しかいない。
まぁ、この疑問は最初っから思ってたことなんだけどね。
「え? だってー梨羽の抱き心地、めちゃくちゃいいんだよね。 一回この感触味わっちゃうと離したくなくなるの」
返ってきた答えがこれだ。
うん、非常に絢らしいが…
一歩間違えた方向で捉(とら)えれば危ないぞ。
抱き心地なんて言ってるけど絢と身体の関係は一切持ってないのでご注意を!!
「あぁ、うん。 ありがと?」
疑問形なのは気にしないでもらいたい。
………あ。
桐先輩のこと、絢に聞けばいいじゃん。
「ねぇ、絢?」
離したくなくなるって言っていたので離せと言っても無駄に終わる予想がついたのでそのことは言わずに代わりに疑問を聞くことにした。
「んー? 何?」
甘えた子猫みたいな感じで先を促す絢。
「桐先輩の噂って知ってる?」
聞いた途端、頬を擦り寄せていた動作をやめてピタッと固まって動かなくなってしまった。
え? 何?
「それ…本気で言ってんの?」
今までとは違う冷たい声の絢。

