見られてないことを祈っていたがどうやらそれは無駄に終わった。


「へぇ? 気づいてたんだ?」


冷酷で尚且つ、妖艶な笑顔を浮かべながら校舎の陰から出て来てあたしに近づいてくる。


どうやらあたしは無意識のうちに後退りをしていたみたい。


さっきまでなかった壁に背がついてるんだもん。




横に逃げようと体の向きを変えた瞬間、魁迩の手によって阻止された。


両脇に魁迩の手が壁についていてあたしは動けなくなった。


嫌な汗が背中をつたう。




「ちょっ…!! こんなとこ他の人に見られたらどうすんの!?」


噛み付くように言えば…


「オレがそんなヘマ、するように見えんだ?」


と返ってきた。


コレを言われると言い返せないんだよねー…。


だって今まで、生まれてずっと一緒(学校内で)だけどバレたことなんて一回もない。


もちろん、疑惑があがったこともない。


そんなヤツが言うことには妙に説得力があるというものだ。


なので返す答えは


「思いません…」


しか、ない。


はたして魁迩に口で勝てる日はくるのだろうか…?