〔大家さんの部屋の前〕
やっちまった…。
でも、まあ、
挨拶もまだだったし。
ついでだ!ついで!
ピーンポー〜ン…
「はい」
「2○6号室の井倉です。
このたび、引っ越しの
ご挨拶に伺いました。」
ガチャ
「あらあら〜。わざわざどうも。
それにしても随分お若いのね〜。
うちの息子と同じくらいかしら。
井倉さん、大学生?」
「あ、はい。大学がここから近いので
引っ越しを。」
「あらまあっ!K大?!
うちの息子も今年から
K大生なのよ〜。
K大って偏差値高くて
大変だったでしょ〜?
でも、うちの息子は
一番家から近い大学なら
どこでもいいって
いうもんだから、
じゃあK大ぐらいねってことで
そうなっちゃったのよ〜。」
「……はあ、そうですか。」
めんどくさそうなオバサンだなあ…。
あ、そうだ。
お隣さんの鍵のこときかなきゃ。
「あの〜…2○5号室の方が
鍵をなくされたみたいで…。
部屋に入れないそうです。」
「あら!また!大丈夫かしら…。
由井川さん、2週たて続けに
鍵なくしてるのよ!
何かあったのかしらねえ?」
いや、しらん。
てか由井川って?
……ああ。
2○5号室の人か。
「じゃあ、仕方ないけど、
スペアキーすぐ手配するわねえ。
悪いんだけど、由井川さんに
そう伝えてくださる?」
「あ、はい」

