菊ちゃんはカバンからゴソゴソとポケットティッシュを出して私に渡してきたり、周りの人たちに「見てんじゃないよ!」と言ってみたり。


私が泣き止むまで待っていてくれた。


正確には泣き止むことが出来なくて、結局歩きながら泣いたのだけれど。


私は菊ちゃんに、ボソボソと昨日のことを話した。


嗚咽も混ざっていたから、おそらく何を話しているのかところどころ聞こえなかったと思う。


それでも菊ちゃんはウンウン、と話を聞いてくれた。


私が最後まで話し終わったところで突然彼女は立ち止まり、歩道の真ん中で私を真正面からギューッと強い力で抱きしめてきた。


「萩。大丈夫じゃないよね。つらいね」


と言う菊ちゃんの言葉が、私の耳に伝わってきてさらに涙が出た。


ここでいいくらい泣いて、もう泣くのはやめよう。


そうでなければ、このままでは芦屋先生のことを責めてしまいそうだったから。


抑えきれない感情が爆発して、菊ちゃんの制服を汚してしまうくらい泣いた。


涙が枯れればいいのに。
涙なんて枯れてしまえばいいのに。


もう泣けないくらいに、これ以上泣かなくていいように。