あれから、何日もたたないうちに
事件は起きた。

亜子が由紀と別れた。
それを教えてくれたのは、亜子・本人だ。

「まあ、最初からそんなに好きじゃなかったけどね。」

亜子はそれほど気にしている様子ではない。
だいぶ、クラスに慣れてきたとはいえ、
季節はまだ春だった。

出会いと別れの季節。

あたしは複雑な気持ちのまま、
1日を過ごした。

放課後、あたしはいつものように
美佳と部室へ向かった。

斉藤美佳(さいとう・みか)。
2年になって同じクラスになった。
たまたま、部活も同じだったため、
一緒に行動している。

部活は、総合芸術部。
演劇部が廃部になったので
美術部と混ぜたらしい・・・。
人の前に立つことがそこまで好きではないあたしには、
ただの迷惑である。

「おはようございまーす」
声をそろえてあいさつをしながら
部室に入ると、何人かの先輩が返してくれた。

が、返してくれない先輩もいるわけで。

まあ、それほど気にはならない。

「あ、おはようございます!」
またもや、声をそろえて
きちんとあいさつするのは、
新入部員の1年生たちだ。

桐谷弥生(きりたに・やよい)。
伊藤波琉(いとう・はる)。

二人は同じ小学校出身で絵がうまく、
あたしなんかとは比べものにならない。

あたしはただ、休みが多いという理由で入ったので
なんとなく二人に悪い気がしてしまう。

実は、新入部員は二人ではない。
もう一人。
西山沙衣(にしやま・さえ)。

あたしは、どうもこの子が苦手だ。

なんというか・・・、
生意気?